28回目 質量のあるエネルギー/ないエネルギー
28回目 質量のあるエネルギー/ないエネルギー
15~20年ほど前になる。吉田博士によって重力に基本をおく学説が体表医術の世界にもたらされた。それ以後、治療者の中にも重力エネルギーを治療の根本におく説に賛同するものもでてきた。当時、私もその一人だった。言いかえれば質量のあるエネルギーに治療の基本をおくものだ。
しばらくして私は、重力説だけに治療の基本をおくのは少しあやまりがあるのではないかと思いはじめた。はじまりはストレスについて考えたときからだ。ストレスには「質量がある/ない」? とう然、精神エネルギーなので質量はない。
そこで疾患に関係するだろう物理的エネルギー中、質量のないエネルギーについて考えるようになった。たとえば温度→電磁波/音→騒音・雑音/呼吸/筋肉運動/光。*振動については「物体が動いて振動がうまれる」ので、物体自体には質量があり、発生する振動には質量がないと考えた。
再三のべるように物理学説では「エネルギーは同種間でしかほとんど作用しない。異種エネルギー間での作用には、同種間の100万倍のエネルギーを要する」といっている。
治療世界でいえば、「質量のあるエネルギーは質量を必要とする治療対象部にしか作用しない」。質量を必要としない対象部には作用しないことにになる。さらに生理学的考えをくわえれば、質量を与えてはいけない治療対象部に質量を与えたばあい、治癒方向にはけっして向かわない。むしろその逆方向にむかう可能性がでてくる。
知ってのとおりカイロプラクティック体表医術は主に、患者さんの身体を外→内向きに「押し圧」をくわえる。先ほどらいの延長線でいえば質量のあるエネルギーだけを治療にもちいる傾向にある。
一方おなじ体表医術である近代の鍼/灸については、どちらかといえば質量のないエネルギーを治療にもちいているようだ。 *古代では鍼/灸/湯液(漢方薬)は三つで一つと考えていたようだ。「十四経発揮」中国版原文にはそのように記されている。
治療という立場にかえって考えれば、カイロプラクティック医術に不足しているものは質量必要としない治療対象部をどのように治療するのか? 一方、鍼/灸は質量を必要とする治療対象部にどう治療をするかということになる。 *どちらにしても質量を必要とする/しないを正確に判断するには創意工夫がいる。
誤解があるといけないのでつけ加える。カイロ治療に鍼/灸を使えと言っているのではない。治療対象部が質量を必要としないばあい「押し圧」では対処できない。治療にはかなりの工夫がいると主張している。
すこし厄介なことをのべる。その「系-」において治療対象部→「メジャー」が脳内になったばあいだ。とう然、脳内メジャーに質量はない。その脳内メジャーを治療しないかぎり治療はここで止まる。治療対象部は体幹/四肢にはもどってこない。
無視して治療をすすめたとしても絶対基準法で治療後を観察すれば治療がうまくいかなかったことがわかる。「脳内メジャー」の質の特定と治療方法を各自確立しなくてはならない。